「衣・食・住」日々の生活の中で、私の好きなもの事をご紹介しています。
時には身勝手な自慢話、時には耳より情報、時にはつまらぬウンチク話・・・
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◆ 山下海産の銀付いりこ / 2007年 8月

 

仕事柄、大勢の人との出会いがあります。 それも食べる事や食べる物に対して、かなりの「こだわり派」の方々です。 有難いことに、特に東京で教室をさせていただくようになってから、(以前にもお話しましたが)‘差し入れ’と申しますか、入手困難な‘お取り寄せ品’のおすそ分けを、色々と頂戴する機会が増えました。 生徒さん達から教えて頂いた“美味しいもの”が、実にたくさんあります。

この《銀付いりこ》も、そんな中のひとつです。 自称「お取り寄せおばさん」と仰る東京教室のYさんから頂いたのが確か二年前の事です。 かの辰巳芳子先生もご愛用の品だとか・・・ 香川県観音寺市の山下海産という会社のものでした。

普段、教室では昆布と鰹からの「一番だし」を使いますし、時に「いりこ」を用いる場合には、“えぐみ”がでないようにと当然ですが頭と内臓の部分を取り除きます。 が…、この《銀付いりこ》は頭からそのまま食べても苦味も生臭さも全くありません。 その名の通り、身が銀色に輝き柔らかで、一晩水に浸すことなく、すぐさま上品であっさりした美味しいおだしが取れます。

頂いて直ぐにお電話で注文をした時には、なんと‘品切れ’でした。 この《銀付》が量産できない理由は、7月に岸近くに発生するミズクラゲの群れの中に入り込んでいる片口鰯の群れを、クラゲもろともすくい上げるという特別な獲り方をしているからだそうです。 その時にクラゲがちょうどクッションとなり、網ズレで傷つくことの無いきれいな《銀付》ができるのだそうです。 「注文は新物が上がる8月時分が良いようですよ」と教えて下さったYさんのお言葉に合点がいきました。

母の味噌汁は「いりこだし」がベースのいわゆる家庭の味です。母は私達が子供の頃「カルシウムだから…」とだしを取った後の「いりこ」を引き上げてはくれず、無理矢理、味の抜けた煮干を味噌汁と共にたべさせました。(笑) なので、ずっと長い間、私は「いりこ」が苦手でした。 “食育”とは確かに大切な事だと身をもって感じています。(大笑)

「いりこだし」は元来、関西のものなのに… 東京の方にこんな美味しい「いりこ」を教えて頂くなんて… 現在の情報社会に驚くばかりです。 この《銀付いりこ》 お出しには勿体無い?というか、私はそのままで「おやつ」や「おつまみ」にしたり、焼きうどんやお好み焼き、パエリアの上からも手でほぐしながら振りかけて食べています。 風味、旨味がグ〜ンとアップします。