◆ 2008年 2月 未開紅 “梅一輪一輪ほどの暖かさ”
例えば梅を表すお菓子の銘としては「此の花」「紅梅(寒紅梅)」「香梅」「こぼれ梅」「飛び梅」「窓の梅」「福梅」「ねじ梅」「東風」などがあります。 直接梅を用いたお菓子には山形の「のし梅」、ご存じ「水戸の梅」、一関の「田むらの梅」などがありますし、大宰府の「梅が枝餅」も忘れてはいけませんし、金沢の「花うさぎ」も形は可愛い梅の花ですね。 おそらく各地の梅の名所では、梅にちなんだ銘菓があることと思います。 そんな中で「未開紅」は、やはり文字にも形にも梅を主張するものが無いと思いませんか。(笑)
四隅を持ち上げ包み込む形は、古い絵図帳に見られる「玉手箱」の形です。 紅色の四角い餅(求肥)生地の中央に餡玉や羊羹を置き、包むように真ん中に生地を集めたこの形です。 「玉手箱」を開く時の期待感とでも言いましょうか、その楽しみや喜びを、今まさに開こうとする梅の花に置き換えて、春を待ち望む心情に重ねたのだと理解できたのは、随分、後のことでした。 教室でも「こなし」の応用編で、この「未開紅」を行いましたが、二色を重ね合わせる時に間にどうしても空気が入り気泡が透けて見えたり、厚みが平均しなかったり、正方形にきちんと切ることが難しいようで、何処か「だらしない未開紅」になってしまいます。(笑)また、中餡と外側のこなし生地の大きさのバランスも大切で、中餡が小さいとグズグズの蕾が出来、逆に中餡が大きいと既に開いた(まぬけに口を開いた)梅になってしまいます。 “きりり”とした正方形が、“ふっくら”と膨らみ、「今!開かん!」とする力強さにも似た美しさを表現できなければ、このお菓子の意味は無いように思います。 和菓子のデザイン性と銘の面白さを教えてくれたお菓子の一つです。
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